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私的旅行記

メリダ

メリダ滞在中有名なチチェンイツァのマヤ遺跡へ足をのばした。メリダから2等バスで約2時間、チチェンイツァは暑い。そしてものすごい数の観光客。そのほとんどがカンクンから来たのだろう。今回の旅行で初めての観光地らしい観光地。日本からの人もかなり多い。

この遺跡で残念だったのは遺跡の周りが綺麗に整地されていたこと。ティカールのようにイマジネーションがかき立てられることはここではなかった。しかしこれだけの観光客を受け入れるためには仕方のないことかもしれない、金の成る木なのだから。

チチェンイツァからメリダに戻る2等バスは現地の人とわずかな観光客を乗せてユカタンの原野を走っていった。私は後部車輪の上の座席に座っていたのだが突然下からパーンという大音響とともにバスのスピードがみるみる落ちてきた。パンクだ。

実はこのときだけでなくメキシコで3回同じようなパンクにあっている。ひどいときは高速道路上でパンクの後、タイヤに止めてあるボルトが破損して動けなくなり乗客全員後から来るバスを手当たり次第にヒッチハイクするなんて芸当をしなければいけない目にもあい、目的地に着くまでに4回もバスを乗り継いで疲れまくった記憶がある。

メキシコはペソの下落のため物価がとても安い。ベリーズ、グァテマラよりも安い。一見、道がきちんと整備され、良い車が走り、少なからずアメリカの影響を受けて発展してきたこの国はとても豊かに見えたが、実はグァテマラ同様、貧富の差など様々な問題を内包していることに気付くだろう。パンク一つにもその陰を見たような気がした。

さてユカタンの原野を走駆するバスのパンクは意外なプレゼントを私たちにもたらした。

車の修理工場で1時間ほど費やした後、夕暮れの原野をバスはひた走った。隣に座っているフランス人女性旅行者の顔が夕焼けで赤く赤く燃えるように見えた。おそらく私も同じように見えたことだろう。進行方向斜め前、原野ににゆっくりゆっくり沈んでいく太陽、本来毎日起こる普通の出来事がこの時はあたかも壮大な物語の一部であるかのような気がした。もしかしたらこの瞬間を体験したいがために自分はこの地に来たのではないかとこの時思った。